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「新しい家を建てようと思い始めて以来ずっと思い描いていたのは、広いキッチンとリビング、そして屋根付きのアウトドアデッキまでが一直線に流れる空間。たくさんの人を呼べる家にしたかったんです」
休みの日には20人規模で友人や愛好家たちが集まってテーブルを囲むことも珍しくないという。
というのも施主の霜島氏は、実はとあるカルチャーサイドの重要人物。“東京カリ~番長”と聞けばご存知の方も多いことだろう。
そのメンバーのひとりとして、今夏また共同でレシピ本を上梓したばかりだ。
この日もキッチンからは胃袋を刺激するスパイスの香りが立ち込めていた。
(カバードポーチの外デッキからLDKを臨む。家主が欲しかったのは、ここを訪れる人びととのこの景色。ちなみに氏が立つキッチンの真上に二階のご夫婦の主寝室がある)
(アメリカ製の旧いビス入れをリメイクした照明カバー。ピーズ・サプライ オリジナルの部材たちは真新しい家にちょっとしたスパイスを効かせてくれる)
設計・施工を務めたピーズ・サプライ・ホームズとともに家をつくっていくのは、実はこれで二度目。
湘南に移住してきた15年ほど前、購入した中古物件をリフォームした際に彼らと出会った。
「初めてのマイホーム、雰囲気のいい古材を使ったり、DIYしたり……なんていう妄想に対して、多くのリフォーム会社さんが『そういうことはしていません』って取り合ってくれなくて。そんななか親身に相談に乗ってくれたのがピーズ・サプライの小牧さんでした」
「さすがに『昔の学校のようなギシギシ鳴る床にしたい』という僕のリクエストはやわらかく却下されましたが。それでも『自分で壁を塗りたい』と言えば、ミキサーやコテを準備してくれたりと、僕らが思う住まいのイメージにしっかりと寄り添ってくれました」
(サーフボードフリークでもある霜島氏。スキップ・フライもさらりとディスプレイ。左奥、三人姉妹の部屋の入口には前毛で使われていた扉を採用。家族の思い出あるものを受け継ぐことはピーズ・サプライの家のコンセプト)
新築への思いに火がついたのは一昨年前の台風を経験してから。
「暴風雨のなか家自体が揺れるのは本当に怖かった。
あらためて中古の家の守備を強化するくらいなら、新しい棲み家も視野に入れてみようかと思い始めたんです」
(DIYしたウッドデッキ。たまたま話しかけてきてくれた隣家の同世代の職人さんと一緒につくったことで仲良くなり、お酒を飲み交わす仲にも)
調べていくなかで見つけたのがいまの土地。
入り口が細く長く、奥へ進むにつれてフラッグのように広がっていく、いわゆる旗竿地だ。一般的には人気がなく、塩漬け状態だった物件に目が行った。
「最寄駅が近く、比較的クルマや人通りも多いのですが、土地が道路から奥まっているからこそ逆に、自分が求めていたプライベート感ある理想のリビングがつくれそうに感じたんです。なによりも、海近ですしね」
(二階からの眺め。床材には美術館などでも使われる非常に幅広なダグラスファー材をこだわって採用した。キッチンは大人数での使用も想定し、通常よりも広いスペースを確保した)
こうして生まれたのが、冒頭の写真にもある一階が吹き抜けになった大容積リビングと、それにつながるアウトドアデッキを擁した空間。
天井を閉じて、二階にもうひと部屋つくろうか迷ったというが、“前の家ではできなかったことをこの家に込めよう”という明確な意思が、結果的に功を奏した。
「大胆なこの吹き抜けを採用するか否か悩んでいたとき、小牧さんが3Dのイメージをつくってくれたんです。それがなかったら決心をつけられずに無難な形で完成を終え、後悔していたかもしれません」
「くわえて、うちは女の子が三人いるのですが、部屋の数が少ない分、二階の大きなひとつの空間を姉妹三人でシェアしていて。こどもたちがみんなで『部屋は一緒でいいよ』って言ってくれたことも、LDKを大胆に構成できた大きな決め手になりましたね」
(建物を囲む樹々も本職のお隣さんがアドバイスをくれた。いつか木漏れ日が差すリビングを夢見て)
(玄関ホール奥にはシュークローゼット。収納扉はピーズセレクトのビンテージ扉)
霜島さんファミリーの人懐っこさもあってか、すでに普段からたくさんの人びとが出入りするフロアになっているようだ。
「僕の友人たちも自分の家のようにさらっとリビングに入ってくるし、外デッキのテーブルは学校帰りに寄るカフェのように、こどもの友人たちでよく賑わってます」
住み始めてまだ一年弱だが、すでに理想が現実となった住まいに人が集まり始めているようだ。
***
DATA
–
種別:注文住宅
居住者構成:夫婦+こども3人
構造・規模:木造在来金物工法2階建て
敷地:198.06㎡(60坪)
建築:74.11㎡(22.37坪)
延床:107.85㎡(32.56坪)
設計:ピーズ・サプライ・ホームズ
(大きな富士山のドローイングは霜島氏の友人でアーティストのボンジュール・イシイ氏が新築祝いに描いてくれた。空気の澄んだ日には二階にある娘さんたちの部屋のロフトから富士山が見える)
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