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サーフィンを愛する皆さん、映画『エンドレス・サマー』をご覧になったことはあるだろうか? 名前はよく知っているし、キャッチーなポスターも思い出せる。でも、作品自体は観たことがないという方も、けっこういらっしゃるのでは? だとしても、気にすることはない。不朽の名作とはいえ、なにせ1966年に発表された映画(アメリカ本国は1965年)なのだから。
そんな『エンドレス・サマー』が、なんと2024年7月12日(金)から全国公開されることになった。しかもデジタルリマスター版として。映像や音声がより鮮明なものとなって復活するというわけだ。ファンにとっては待望の復活、まだ観たことがないという方にとっては絶好の機会だろう。
というわけで、こちらの記事では公開に先立ち、わたしBlue.編集長の戸井田がネタバレしない程度に『エンドレス・サマー』について、ざっくばらんに綴らせていただきますm(__)m
作品全体のあらすじやキャストのプロフィールについては、秀逸な公式サイトへのリンクURLを最後に貼っておくので、そちらよりご覧いただきたく。(ムビチケのプレゼント情報もあります。ぜひ!)
では、あれこれ書く前に先に結論を。
Q:『エンドレス・サマー』は観るべきか?
A:「ぜひ、 観ておきたい作品です」
理由はシンプル。『エンドレス・サマー』こそ、後に続くサーフムービーの原点といってもいい作品だからだ。
*
名作とよばれるサーフフィルムは多々あるけれど、そのほとんどは “サーファーのために描かれ、サーファーたちに影響を与えた” 作品だ。そんな中にあって、サーフカルチャーの枠を超えて広く評価された名作を挙げるなら、『エンドレス・サマー』(1966年)と『ビッグウェンズデー』(1978年)が双璧だろう。
もし3作目を挙げるとなったら、そこで個々の意見が大きく分かれてくるのではないかと(個人的には『ロード・オブ・ドッグタウン』か『地獄の黙示録』か……どちらもサーフフィルムとは言いづらいけれど)。つまり、それくらい前述の2作品は広く長く、社会的に影響を与えた作品だということ。
ちなみに、両者は共にサーフィンをテーマとしているが、決定的なちがいがある。『エンドレス・サマー』がノンフィクションであるのに対し、『ビッグウェンズデー』がフィクションであることだ。
『ビッグウェンズデー』は広義でいうところのハリウッド映画(規模の大きなメジャー作品)として成功を収めた初のサーフフィルム。公表されている製作費も当時にして1100万ドルと、すごい金額だ。
対照的に『エンドレス・サマー』は、若者たちが、若者たちの意思で、若者たち自身で制作した作品である。監督のブルース・ブラウンは当時26歳にして、プロデュース、ディレクション、撮影、編集、ナレーションのすべてをこなした。さらに主演のマイク・ヒンソンは21歳、ロバート・オーガストが18歳。揃いも揃ってとんでもない若さだ。ちなみにヒンソンは、トリップを決行するために必要な1400ドルの航空運賃をどうやって捻出しようかと、思案に暮れたなんて裏話も残っている。
そんな若者たちが終わりなき夏を求め、たった3人で決行した冒険、すなわち “サーフトリップ” の原点ともいえる物語が世界中のサーファーを夢中にさせ、サーフィンをしない人々にその魅力を伝え、半世紀以上が経つ今なお輝き続けているのである。
ちなみに、圧倒的な存在感を放つポスタービジュアルを描いたジョン・ヴァン・ハマーズヴェルドもまた若く、当時22歳。世界最古のサーフィン専門誌『SURFER』のアートディレクターを務めていた人物だ。
さて、エンドレス・サマーはなぜこんなにも多くの人の胸を打ったのだろう?
いくつかの答えがあるなかで、個人的には「若者たちの混じり気のない純粋な夢を、若者たち自身で描いたこと」をいちばんに挙げたい。もちろんヒットさせたいという願望はあっただろうが、それ以前に「ボードショーツ一枚で、尽き果てるまで波に乗りたい」という想いはすべてに勝るサーファーにとっての究極だ。ブルース・ブラウンはその想いを『エンドレス・サマー(終わりなき夏)』というサーフィン史上もっとも甘美なフレーズで、タイトルとコンセプトをひと言で伝えきってしまった。天才というほかない。そして実際の作中では、未知の波、異国の文化、人々との出会いというサーフトリップの醍醐味に加えて、要所でコメディ要素を織り交ぜるという、後につづく多くのサーフフィルムが踏襲することになる、王道ともいうべきスタイルをカタチにしている。
こうして『エンドレス・サマー』は、大人たちの事情に踊らされることなく、サーファーたちの夢の象徴として、ジャンルを超えた若者たちの青春の結晶として、世界に羽ばたいたのだ。
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