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持続可能な綿花農業を支援する「C4」とアウターノウンの取り組み

持続可能な綿花農業を支援する「C4」とアウターノウンの取り組み

Episode 05
C4
(California Cotton & Climate Coalition)


あらかじめ綿花農家と直に顔を合わせ提携するかたちでコットンの調達を行い、持続可能な理想の綿花農業の未来を考えるファームフォワードのアプローチは、既存のサプライチェーンのあり方を根本から再構築するものだ。それを実現するための企業連合が「C4」。その取り組みには困難が伴うかもしれないが、サプライチェーンの主要なプレーヤーたちはいま、気候にプラスの影響を与えるより良いシステムの開発に向けて協力しながら真剣に努力し始めている。「アウターノウン」もC4に参加するひとつのブランドとしてその一翼を担う。ファッション業界の持続可能な新たな一歩になると信じて……


 サスティナブルな服作りに最適解や近道はない。それはいま現在まだ手探りの段階であり、未踏の領域が多分にあるからだ。サスティナブルなクロージング・ブランドであることを信条とするアウターノウンは、このファッション業界の未踏の領域で最新のさまざまな取り組みを始めている。そのひとつがC4への参加だ。

 C4とは、California Cotton & Climate Coalition(カリフォルニアのコットンと気候に関する連合)の四つのCの頭文字から名付けられた連合の名称。この連合は、Fibershed(生態系とコミュニティの健全性を構築する地域の繊維システムを開発する非営利団体)、White Buffalo Land Trust(再生農業のシステムを実践、促進、開発する非営利団体)、Torus Circularity(環境意識の高いクリエイターのためのコンサルタント)、Materevolve(再生繊維のコンサルタント)の4つの組織が主導し2020年秋に誕生した。連合にはコットン農業経営2社と、コットン製品を主力プロダクツとする衣料品やパーソナルケアやホームグッズなどのいつくかのブランドがメンバーとして加わっている。このうちの最も主要なファウンディング・メンバーのひとつがアウターノウンである。

 アウターノウンでサスティナビリティ&フェア・レイバーを担当するオーブリー・ピーダーセンはC4の活動に参加する意義はふたつあるという。

「ひとつ目は、健全な土壌と生態系を回復させるリジェネラティブ農法への移行を支援することで、地域社会にインパクトを与えていること。ふたつ目は、この業界、特にサプライチェーンの農家レベルでは珍しい協力と検証のシステムが確立されていること。いま綿花栽培は、土地を経年劣化させていく手法に依存していて、短期的に収益を出せても、残念ながら長期的には持続するのが不可能になっている。そこでC4はカリフォルニアの綿花栽培において、どのような農法が気候変動対策に有効なのかを地域ごとに調査することにした。C4に参加している農業経営者は、長年の農法を変えることに不安を抱きつつも持続可能な綿花栽培に舵を切ることを英断した点で、真のリーダーシップを発揮していると思う」

カリフォルニア州のセントラルバレーには綿花農場が多い。C4に参加する農業経営者は持続可能なリジェネラティブ農法に転換し、C4のファウンディング・メンバーと提携しながら理想の綿花栽培を目指す

 リジェネラティブ農法によってカリフォルニアで栽培されるコットンと、それが製品になるまでのプロセスに関わる利害関係者であるファウンディング・メンバーが連携して農家の生産能力の拡大をサポートする仕組みがC4の根幹にはある。農地の生命力を高めて土壌構造と土壌保水容量、自然肥沃度、炭素除去を改善することは、これからのサスティナブルな農業に不可欠な方法。C4の取り組みはこの土壌の健全性を促進する綿花栽培システムのモデルの構築であるだけでなく、検証可能な取り組みでもあるのだ。

From Seed to Garmentの言葉に込めた思い

 食の世界では、From Farm to Table という言葉をよく耳にする。もともとは農場(生産者)から食卓(消費者)へ一貫した食の安全管理をするという考え方を意味するものだ。近年では健康志向や環境問題への意識などとリンクし、地産地消やサスティナブルな食のあり方として、アメリカ西海岸のレストランや飲食業界を発信源に世界的なムーブメントとなった。これにより消費者はどこで誰がどのように栽培もしくは飼育した食材であるかを知ることができ、ある種の透明性=食の安全が確保された。

 では衣類はどうだろう。自分のお気に入りの服の素材がどこでどのように作られ、どんな製造工程を経て衣服になったのか、明確に答えられる人はいるだろうか。ファッション業界は製品の生産背景を長い間語ろうとしてこなかったが、アウターノウンではこうしたサプライチェーンの透明性を高めるために、さまざまな挑戦を行っている。C4の取り組みはそんな彼らがもっともやりたかったことを実現できるプロジェクトなのだ。From Farm to Tableに倣い、アウターノウンでは From Seed to Garment というフレーズを提唱している。種から衣服までを意味するこの言葉の本質を、アウターノウンのリサーチ&ディベロップメント・マネージャーのディロン・シャペルスキーが教えてくれた。

「この言葉は、C4のプログラムに関して言えば、種まきから綿花の収穫、綿くり、糸紡ぎなどの製造過程の完全なトレーサビリティを確保することを意味している。公正な労働やリジェネラティブ農業が確実に行われているかを確認するために、サプライチェーンのすべての段階をチェックするんだ。コットンの調達における私たちの究極の目標は、このサプライチェーン全体を完全に可視化することにある。From Seed to Garmentはまだ一般的に使われている言葉ではないけれど、消費者がこのようなプログラムに触れることで、今後ファッションの世界でより一般的になることを期待しているよ」

種まきから収穫、その先の加工などコットン製品のトレーサビリティの確保がC4であれば可能になる。アウターノウンは、まず農場でどのように綿花の栽培と収穫が行われているのかを知ることが大事だと考える

 C4への参加はアウターノウンにとって望ましい方向に進む有意義な第一歩となった。まずカリフォルニアをベースとするクロージング・ブランドとしてカリフォルニアの農地の健全性を促進させつつ、地元で栽培される上質なコットンを調達できること。さらにこの企業連合体では、商品開発作業の初期段階で競合他社であるメンバー同士が共同で基礎研究を行うことができるからだ。

「私たちはカリフォルニア州のセントラルバレーで栽培されるClimate Beneficial™コットンを使った新製品を開発するためのリソースをC4のメンバー同士で共有するんだ。さらにこの連合の最終的な目標は、いつか連合の助けを借りずに農家がこのコットンを栽培・販売できるように支援することでもある」(ディロン)

リサーチ&ディベロップメント・マネージャーのディロン・シャペルスキー。C4にアウターノウンが主要ファウンディング・メンバーとして参加することに大きな意義があると感じている

 セントラルバレーはケリー・スレーターのサーフランチもある文字通りカリフォルニア州の真ん中に位置する広大な農業地帯。アウターノウンにとってはいわば裏庭のようなフィールドだ。実際にオーブリー・ピーダーセンはそのセントラルバレーにあるストーンランド社の綿花畑をC4メンバーの他ブランドの担当者とともに訪れ、農家の人たちと交流を深めた。

フェア・レイバー・マネージャーであるオーブリー・ピーダーセンは、アウターノウンを代表してセントラルバレーの綿花農場に実際に足を運び、コットンも大地の恵みであることを改めて実感した

「広大な綿花畑はものすごく迫力があった。一面に広がる綿花のなかに身を置き、これがさまざまな工程を経てセーターやTシャツになることを思ったとき、コットンに敬意を抱いたわ。その土地に身を捧げている農家の人たちを通して、土地とのつながりを感じることができた。オフィスのデスクに座ってファッション産業が環境に与える影響について考えているだけでは学ぶことができない体験。実際に綿花の実に触れ、収穫や加工に使われる機械を見学し、土地の管理者としての農家の経験や課題に耳を傾け、毎年の綿花栽培に影響を与えるあらゆる要因について知ることができたことは有意義だった」(オーブリー)

 ブランドはコットンとより深く、意義深い関係を築くことができることを彼女は実感した。

実際に柔らかでふわふわのコットンボールに触れたオーブリーは、それがプレミアムなコットン製品になることに思いを馳せる

特別なコットン使用の “ザ・カリフォルニア・コレクション

 アウターノウンではC4のプログラムによって生み出されたカリフォルニア産のClimate Beneficial™コットンを使用した製品、”ザ・カリフォルニア・コレクション”を今年5月~6月にかけて発売予定だ。マーチャンダイジング・ディレクターのズーリ・メイガースはこのコレクションを発表することに興奮を隠せない。

「コレクションの名前はコットンが栽培されている場所にちなんでいるの。そう、カリフォルニアであることが何よりも意味がある。これらのアイテムはロサンゼルスの工場で裁断・縫製される。それはアウターノウンのヘッドクォーターから車ですぐの場所。この極めてポジティブでサスティナブルな取り組みを誇りに思うわ」

農場と同じエリアにある施設で加工され、米国産コットンの証であるCOTTON USAの認証を受ける。アウターノウンではカリフォルニア産のコットンを使い、製品になるまでの工程のほとんどを西海岸で行うことを目標としている

 原材料の綿花も繊維加工も裁断・縫製もすべてがカリフォルニアで完結する。つまりカーボンフットプリントが限りなく抑えられることになる。完璧なメイド・イン・カリフォルニアだ。アウターノウンの思い描いていた理想のサプライチェーンのあり方でもある。

「現在、ザ・カリフォルニア・コレクションとしてメンズとウィメンズの両方で、フレンチテリーのカプセルコレクションを製作中。まだまだ初期段階だけど、今後C4プログラムがもっと拡大するにつれてClimate Beneficial™コットン製品の提供アイテムが増えていくことを期待している」(ズーリ)

 ゆるく紡がれたフレンチテリー素材をリラックスした着心地のスタイルに落とし込んだカプセルコレクションは、伝統的なアメリカン・スタイルのスウェットのシリーズになるようだ。デザイナーのマイケル・アビーがその詳細を明かしてくれた。

「メンズのスタイルは、ロングスリーブのクルーネック・スウェットシャツとフーディー、プルオン・ショートパンツ。ウィメンズのスタイルも、ロングスリーブ・クルーネック・スウェットシャツとプルオン・ショートパンツ。 クルーネックは伝統的なデザインにインスパイアされたロングスリーブで、アスレチックVノッチをフロントに配し、フーディはカンガルーポケットを備えているんだ。クルーもフーディーも全体にフラットロックシームをディテールに採用している。ショートパンツは折り返しリブウエストバンドにスラッシュポケット、フロントはフェイクフライ、股下はやや短めにしてある。ウィメンズのディテールも同様だけど、ショートパンツはハイライズで股下が3インチ。切りっぱなしの裾はカジュアルでノスタルジックなアメリカの体育会系スタイルのイメージを彷彿させる」

 2023年秋以降はフレンチテリー素材だけでなく、新しいウォッシュ加工を施したコットン製のアイテムも展開していく予定だとか。特別なコットンを使用する”ザ・カリフォルニア・コレクション”は今後プレミアムなアイテムとしてそのラインナップを拡大していくことになるだろう。

それぞれの土地に適した土壌の健全化への取り組みをサポートすることで、健康的でサスティナブルな綿花の栽培を後押しする。アウターノウンはこのC4の活動を通してコットンの明るい未来のために支援し続ける

「C4に参加するすべてのメンバーは、試行錯誤しながらの完璧なプロセスではないかもしれないけど、来るべき世代のために永続的にプラスの結果を生み出すことを目指している。業界における変化の触媒となること厭わず、さらなる飛躍を遂げるために」(オーブリー)

 セントラルバレーの綿花畑の土を踏み、その空気を吸い、綿花の柔らかな感触に触れたオーブリーの言葉はとても力強く、アウターノウンの強い意志を代弁していた。

photo◎courtesy of OUTERKNOWN
direction◎RHC Ron Herman
text ◎Takashi Tomita

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