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OUTERKNOWNのこれまでの軌跡、これからの未来。 Interview:John Moore

OUTERKNOWNのこれまでの軌跡、これからの未来。 Interview:John Moore

Episode 01

John Moore

2015年にケリー・スレーターが立ち上げたアウターノウン。ケリーと価値観を共有するクリエイティブ・ディレクターのジョン・ムーアは、ローンチ以来ブランドの理念と美意識をかたちにしてきた。ファッション業界にエシカルの概念をもちこみ、持続可能な製造プロセスを透明化するなど、ブランドは前例のない挑戦を繰りかえしている。そのうえで生みだされるサステイナブルでプレミアムなアイテムの数々。彼らの挑戦は留まることなく、いまその視線はさらに先の未来を見据えている。

(ロサンゼルスのカルバーシティー。アウターノウンのヘッドクォーターのなかにジョンのオフィスはある。ヴィンテージボードやアートに囲まれたこの空間で、彼はストーリーを紡ぎだす)

 サーフィンの世界における稀代のスーパースター、ケリー・スレーターが立ち上げたクロージング・ブランド、アウターノウン。ケリーがブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めるジョン・ムーアとともに来日し、東京のロンハーマンでローンチ・パーティーを催したのは、もう7年も前のことになる。なぜクロージング・ブランドなのかという問いに、当時ケリーはこう答えている。

「私のサーフィン人生において長年クロージング・ブランドは最大のスポンサーであり、世界の舞台で活躍する機会を与えてくれ、キャリアをサポートしてくれた。私の人生はずっとクロージング・ブランドとともにあったんだ」

 クロージング・ブランドをはじめるのは必然だった。ただサーフクロージングをやる気はなかった。量産されて大量に消費されていくものにはしたくない。高品質なファブリックを使い良質なスタイルで良質なファッションをエシカルにクリエイトしたい。それがブランドをはじめるにあたり最初に思い描いたこと。このケリーの美意識や哲学を、ジョンは同じ価値観で深く理解しクロージングに落としこむ。

 サーフクロージングを着て育ったサーファーが大人になったいま、どんな服を求めているのか。あらゆる環境のなかを快適に旅することができる大人のコレクションとはどんなものか。彼らはこうした課題と向きあい、サーフコレクションではないもののコースタルな雰囲気を漂わせるスタイルを確立していく。そのうえでブランドのコアとなる、サステイナビリティ、透明性、海洋保護の3つのテーマを掲げた。

 サステイナブルなマテリアルを使うことは初期段階から彼らの使命だった。

 トランクスやジャケットには廃棄される漁網をミックスしたナイロン廃棄物から作られる100%リサイクル繊維のECONYL(エコニール)を使用。いまもアウターノウンが使い続ける代表的なサステイナブル・マテリアルのひとつだ。また製造工場の労働環境に意識を向けフェアトレードにもこだわり、その透明性に責任をもつ。海洋保護に至ってはサーファーが作るブランドである以上、マストな使命といってもいい。

 7年前に彼らが語っていたこうしたブランドのミッションはとても新鮮だった。しかしいま、ファッション業界ではそのすべてがあたりまえになった。そういえばジョンはローンチした際に、こんなことを語っていた。「インダストリーのなかで変化をもたらすことが目標のひとつだ」

 はたして彼らはインダストリーに変化をもたらすことができたのか。この7年間でどのような取り組みや挑戦をしてきたのか。これまでのアウターノウンと、未来に向けたこれからのアウターノウンについて、クリエイティブ・ディレクターのジョン・ムーアにあらためて話を聞いた。


ジョン・ムーア / アウターノウンのクリエイティブ・ディレクターであり、ストーリーテラー。リッチでリアルなストーリーに基づいたユニークなブランディングで、これまで20以上の名だたる企業やブランドと関わってきた。本物を知るからこその独自の価値観と確かな審美眼で、アウターノウンの美意識を創る

徹底したエシカルな意識

 インダストリーに変化をもたらしたかどうかについて、ジョンは確固たる自信を滲ませる。

「ケリーと私は、すでに2013年にはサステイナビリティについて話していた。アウターノウンをはじめた2015年、多くの人たちが私たちの言葉に首をかしげた。まだファッション業界ではサスティナビリティについてほとんど話されていなかったからだ。しかし私たちは最初に掲げたサステイナブルなクロージングづくりを貫いた。構想から9年、ローンチして7年になるが、その間に業界全体が私たちの目指す方向にシフトしてきたと感じている。いまやサステイナビリティを意識しないブランドやデザイナーを見つけるほうが難しい。そういう意味では、私たちは可能性を示し、さらに推し進め、多くの変化をもたらし、業界全体に少なからず影響を及ぼしていると自負している」

 サステイナビリティと同様にエシカルという言葉もアウターノウンが早くから唱えていたキーワード。人と地球に優しいエシカル・ファッションは、いまではエシカル消費に基づいた服選びとともにファッション業界にも消費者にも浸透している。ジョンたちが思い描いていた理想に、世界が追いついたといってもいいかもしれない。持続可能なマテリアルでエシカルに生産されたものを選んで着るということは、そのブランドのコンセプトに賛同することであり、着ていて気持ちがいいものだ。こうしたエシカルな意識を消費者と共有することをアウターノウンは最初から目指していた。

「エシカルに作られているプロダクトを着ることで、人や地球に対しいっしょに責任をもつ一員になれる。だから気分もよくなる。着心地やマテリアルの肌触りといった物理的な気持ちよさだけでなく、服を選んだことを含めすべてにおいて気持ちがいいことが重要だと私たちは考えている」

 ローンチ当初、多くの人が価格についてネガティブな反応をみせた。たしかにサーフクロージングに比べて価格帯はかなり高めだろう。しかし彼らの信念やそれを貫く取り組み、そしてクオリティを見たとき、その価格は品質相応だといえる。耐久性が高いうえに、デザインやスタイルが普遍的であることに意味があるとジョンはいう。トレンドを追わず、飽きのこない長く着られる服であるということ。いろんなシーンで着回しができる汎用性と、トレンドの変化に左右されない不変のスタイル。つまり流行にあわせて次々に服を買い替える=消費することの真逆をアウターノウンは提案している。高品質なアイテムを愛着をもって長く着ていくことを考えたとき、価格だけでは見えてこない大切なものが見えてくる。

(クロージング・ブランドのアイデアを温めていたケリーがジョンを誘いアウターノウンは生まれた。ふたりが構想しはじめてから、来年で10年になる)

 アイテム数と生産数はフレキシブルに調整している。新しいプロダクトやシリーズを発表するとき、きわめて最小限でスタートする当初からのやりかたは変えていない。市場の反応を見極めて、人気がでたり定番アイテムになるとわかったら深く切りこんでいく。

「初期のころから作っているブランケット・シャツが好例。最初は300枚しか作らなかったけど、いまはロングセラー・アイテムなので、よりたくさんのカラーやパターンを提供し、生産数も増やしている。需要を見ながら責任をもってアイテム展開をしているんだ」

 とはいえ、作り過ぎないということも、余剰在庫や無駄を抑える意味では重要であり、環境に対する負荷を減らすことに繋がる。いまブランド内では“Make Less Better”(=よりよく減らそう)というフレーズが共有されている。これまでの過程でアイテムの選択肢を増やしすぎた時期があった。そこから学んだ教訓だという。

(ヘビーウェイトのオーガニックコットン100%で作られたクロマ・ブランケット・シャツはアウターノウンを代表するアイテム。肌触りのよいブランケットに包みこまれるような着心地だ)
(ビーチタオルのような柔らかな風合いが特徴のハイタイド・コレクション)

繰り返される挑戦と学び

 ブランドをローンチした当初、作りたかったが作らなかったアイテムがある。ジーンズだ。製造の工程で環境に与える負荷が著しいことから、環境的に責任がとれるまでジーンズは作らないと決めていた。しかしその後、アウターノウンではS.E.A. JEANSを2018年にリリース。以来、カスタマーから高い支持を得ている。ジョンは信頼できるサプライヤーとのパートナーシップにより最高にサステイナブルなジーンズを生みだすことができたことを喜んでいる。

「S.E.A. JEANSは世界でもっともクリーンな製造工程で作られているジーンズだと確信している。ソーラーパワーを使って製造し、有害な化学物質は使わない。作る工程で使ったすべての水はリサイクルされる。クオリティに自信があるので寿命は保証するよ。伝統と品質を愛するデニム・ピュアリストに支持される、たぶん世界で一番サステイナブルなジーンズなんじゃないかな」

 もちろんオーガニック・コットンとフェアトレードにもこだわったプレミアム・ジーンズだ。

 2019年にはウィメンズ・ラインもローンチ。メンズの定番アイテムをウィメンズにも落としこんだ。とくにブランケット・シャツとジャンプスーツのコレクションはすごく人気だそう。

 さらにいまアウターノウンでは未来に向けたさまざまな取り組みを実践している。たとえば、C4プログラムもそのひとつ。

「C4とは“California Cotton & Climate Coalition”の略称。これは土壌を健康的に保つリジェネラティブ農法によりカリフォルニアで栽培されるコットンと、それが製品になるまでを、栽培者とブランドと製造業者が連携して取り組む農業プロジェクト。私たちの綿畑はカリフォルニアのセントラル・バレーにある。ケリーのサーフランチのすぐ近くなんだ」

 他のいくつかのブランドと共同で取り組んでいて、これにより綿花も繊維もプロダクトもすべてメイド・イン・カリフォルニアとなる。そのプロダクトがいかに環境に優しい素材で、かつカーボンフットプリントを抑えて作られているかをマーケットに示し、より透明性を高めることにもなる。

(オーガニック・コットンはアウターノウンの必須のマテリアル。いまリジェネラティブ農業により地元カリフォルニアでコットンを栽培するC4のプログラムにも参画している)
(環境へのダメージが大きいことで知られるデニムの製造だが、S.E.A. JEANSは環境的にもっともクリーンな製造プロセスで作られる。すべてオーガニックコットンで、イタリア、トルコ、日本のデニム生地を使用。スタイルはローカル、アンバサダー、ドリフター、ステーツマンの4種類。ベストセラーは細身のアンバサダー。ジョンのお気に入りはストレートフィットのローカルだとか)
(サステイナブルでオーセンティックでプレミアム。品質的にもこれ以上ない仕上がりのS.E.A. JEANS)

 また昨年末には、アウターノウンのユーズドのクロージングをウェブサイト上で売り買いできるアウターウォーンというプラットフォームを立ち上げた。古着をファッションに取り入れることは服を循環させるという意味でサステイナブルであり、今後このプログラムを世界的に広げていきたいという(2022年現在はアメリカ国内のみでしか利用できない)。


 循環といえば、2030年までにアウターノウンのすべてのコレクションでマテリアルを循環させるという目標も掲げている。

「いまは未使用のバージンマテリアルを使っているけど、2030年までにすべてのアイテムをすでに使用されたマテリアルや繊維を再利用して製造し、完璧な循環型にシフトすることを目指している。サステイナブルでエシカルな製造を考えたとき、マテリアルのリサイクルはとても意義深い」

 つねに挑戦と学びを繰り返し、アウターノウンは成長してきた。成長し影響力をもつことで、さらなる革新をカスタマーやコミュニティに提供し、業界を鼓舞していきたいと考えている。ジョンのいう「責任ある成長」とはそういうことなのだ。

「今後はもっと世界的に展開していきたい。もちろん日本でもね。だから私たちはロンハーマン・ジャパンをディストリビューション・パートナーに選んだんだ。彼らとはブランドのローンチ当初から友好的な協力関係を築いてきたし、サステイナビリティを軸とした価値観や考えかたを互いに理解しシェアしてきたからね」

 世界を旅するジョンにとって日本は、豊かな文化に触れることができる大好きな旅先のひとつ。旅の目的はインスピレーションを得るためだったり、サーフィンするためだったり。ロンハーマンでのローンチ・パーティーも日本での忘れられない大切な思い出だという。

「日本はアウターノウンのストーリーの一部である」と語るジョンの表情は柔らかく、とても親しみ深かった。

(ロサンゼルス近郊で生まれ育ち、4歳からサーフィンしてきたジョン。アートを専攻したサンタバーバラの大学時代も、スペインへ留学中も、いつだってサーフィンができる環境に身をおいてきた。力みのないスタイルが彼のサーフィンの魅力だ)

photo◎courtesy of OUTERKNOWN
direction◎RHC Ron Herman
text◎Takashi Tomita

OUTERKNOWN Episode 02
“Find Your Outerknown”を体現するセージの想い
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2022年11月10日発売

サーファー、食にふれる

2022年11月10日発売

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