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陽に焼け、数多のリペアが施された旧いサーフボードはサーファーたちに乗り継がれ、いつしか何にも代えがたい一本に昇華する。
それは、刻まれた時間の厚みだけが生み出せる唯一無二の佇まいを宿す。
今回ご紹介するピーズ・サプライ・ホームズは、そんな歴史という精神を取り入れた住まいづくりを行なっている住宅会社だ。
ピーズ・サプライでは、家屋の建て替えの際に、思い出ある建材や建具など、解体する家の一部を新たに建てる家に積極的に取り込むことで、家族の歴史を継いでいくことをコンセプトにしている。
それは人の想いを受け継ぐのと同時に、自然な形で新しい棲み家に旧き良き質感を与え、その家族だけのオリジナルな空間を醸成してくれるというわけだ。
(“FLAT HOUSE+”外観。松尾邸はガレージもついた拡張タイプ。上階と下階の屋根の角度や位置、そのバランスが美しい)
(玄関の土間スペース。ロングボードは天井部分のラックに2~3枚重ねて収納できる。右手に見える白い扉は主寝室への入口。左手前の扉は納戸、二番目の扉は同居するお母さまの部屋への入口。廊下いちばん奥の白いドアは子供部屋への入口になる)
取材におうかがいした松尾さんファミリーは、そんなコンセプトをしっかりと新宅に落とし込んだ。
例えば、お爺さまの書斎で長年使われていた昭和レトロな照明器具を新宅のロフトの照明に採用したり、使い込まれた和室の長押の木材の一部を玄関の小物掛けとしてリメイクしたりと、新しい家に彼らにしか手に入らないオリジナリティをくわえた。
聞けば、他の住宅関連会社と一度はサインを交わしたものの、違約金を払ってまでも契約を解除し、新たにピーズ・サプライに建設をお願いしたという経緯も持つ。
(ロフトはこどもたちの遊び場兼旦那さま、聡也さんのDJスペース。聡也さんは若かりし頃、定期的にイベントのオーガナイズもしていたほどのミュージック・ラヴァー)
(2階のDK部分。キッチンの上がロフトになっている)
そんな彼らが選んだのは、“FLAT HOUSE+”という米軍住宅をオマージュしたモデル。
沖縄の大学で知り合ったというご夫妻は当時、現地のフラットハウスに実際に住んでいたこともあり、その住空間に非常に馴染みがあった。
ピーズ・サプライ代表の小牧氏は米軍住宅の存在をこう評価する。
「フラットハウスは身体の大きなアメリカ人のために建てられた日本の平屋で、従来の日本住宅にはなかった絶妙なバランスの空間なんです。
もっと言うと、アメリカ本土にはフラットハウスは存在しておらず、当時日本の大工たちが日本の建材で在日アメリカ人たちのために建てた、この国独自の住宅デザイン。
だから日本の在来建築にはない雰囲気を携えながらも、違和感なくわが国の景観にスッと馴染むんですね」
そして、モデル名の“+”は、既存の米軍住宅のデザインに2階部分を増やすなどの手をくわえ、一般住宅としてより住み心地良く再設計したことを意味している。
(外シャワー。人通りが多い公園入口ということもあり、イタズラ防止のための水道脱着式シャワーユニットを採用した)
(角地ということもあり2方向から光が差し込む。明るさを増長する白壁は珪藻土の左官で、夫婦でDIYした)
「角地で前面が公園ということもあり、上階をLDKにしたのは正解でした。明るいし、開放感が半端ないんです」
2階部分は、フラットハウスのデザインを踏襲した切妻屋根で、その形状を活かしたロフト付きの吹き抜けを採用している。よって、その容積の大きさも開放感を醸成するのに一役買っている。
そして1階部分は、同居するお母さまの住空間と夫婦の主寝室、こども部屋、そしてお風呂、洗面、トイレなどの水回りという構成だ。
こども部屋は成長に合わせて半分に仕切れるよう、広めの空間にエントリーのドアを2つ用意した。
玄関土間の天井にはロングボードのストッカー、玄関収納脇にはミッドレングス~ショートボードのストックヤードを設置。
ストックヤードの壁だけは珪藻土左官ではなく木張りにしてあるので、家もサーフボードもキズつけることなくラフに使える。
玄関外の踊り場正面には、沖縄ブロックが外観のファサードのひとつとしていいバランスで鎮座している。
(2階にもトイレを設置。ペーパーフォフダーなど陶器部材はすべてアメリカン スタンダードのプロダクトを採用した)
(“FLAT HOUSE+”の家族の歴史を取り入れた実例。旧家の階段手すりをトイレに設置した。存在感を放つ凝った意匠)
「この家をひと目見に、いろんな方が訪ねて来てくれるようになりました」
親しみのある良い家は、自然と人々を引き寄せる。
***
DATA
–
種別:注文住宅
居住者構成:夫婦+こども2人
構造・規模:木造在来工法2階建
敷地:127.25㎡(38.4坪)
建築:80.76㎡(24.4坪)
延床:112.75㎡(34.0坪)
(“FLAT HOUSE+”の家族の歴史を取り入れた実例で、旧家のガラス建具をはめ込んだ明かり取り。ハンドメイド時代のニュアンスは現代のプロダクトからは入手困難。)
(照明カバーはアメリカ製の古いビス入れをリメイク。ディテールにも洒落たアイデアが満載)
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