Tags
Episode 02
Sage Erickson
アウターノウンのウィメンズ・ラインがローンチして間もなく、アンバサダーとしてブランドのコミュニティに加わったセージ・エリクソン。プロサーファーとして世界のトップ10入りを果たすなど華々しいキャリアを築いてきた彼女はいま、コンペシーンから距離をおき、新たにフリーサーファーとしての一歩を踏み出した。自然に囲まれて育ち、ピュアな心をずっともち続ける彼女には、そうしたい理由があった。セージの想いを知りたくて、ヴェンチュラを訪ねた。
*
海と丘に囲まれたビーチタウン、ヴェンチュラ。ロサンゼルスからはパシフィック・コースト・ハイウェイ(州道1号線)を北上すること1時間半。たくさんのサーファーが住む、こぢんまりとした落ち着いた町だ。その町のはずれの静かな住宅街に、プロサーファーのセージ・エリクソンは暮らしている。生まれ育ちはヴェンチュラから少し内陸に入ったオーハイ。近年は隠れ家的なスポットとして人気の自然豊かな小さな町だ。10歳のとき、彼女は家族とともにオアフのノースショアに引っ越し、そこでサーフィンを覚えた。
「ノースショアでの生活は最高だった。美しい海と自然に囲まれた素晴らしいライフスタイル。島のコミュニティはとても親密で、子どものときにあの特別な場所で育ったことはいろんな意味でよかったと思う。私はすごく活発な子だったの。ノースショアでサーフィンをはじめ、海のなかにいることが大好きになった。間違いなくたくさんのことを学んだわ」
コンペティションに出るようになり、17歳のときに本気でプロツアーを回りはじめた。それからキャリアを積み重ね、2016年には世界ランク9位、2017年と2019年の二度にわたりUSオープンで優勝も飾っている。しかし彼女は昨年を境にもうツアーには出ていない。コンペティションを退き、いまはフリーサーファーとして旅をして波を追いかけている。フリーサーファーに転身したきっかけは、アウターノウンとの出会いだった。
「アウターノウンのファミリーの一員になりブランドに関わるうちに、これまでのような勝つことだけに執着するコンペティティターではいられなくなったの。彼らのスピリットとミッションに触れ、私は海をどう守るかに立ち戻り、そのことにもっとフォーカスしたいと思うようになった」
セージがアウターノウンのアンバサダーになったのは、ウィメンズ・ラインがはじまって間もないころ。自分がブランドを代表する存在になるのなら、同じ価値観を共有できるブランドを自分自身で選びたいという思いから、彼女のほうからアプローチした。サステイナビリティという強い柱を掲げているアウターノウンにシンパシーを覚えたからだという。自分に相応しいスポンサーを自分が選ぶという強い自主性をもつ彼女は、ブランドコンセプトに自身の想いを重ね、その扉を叩いた。アウターノウンのクリエイティブ・ディレクターのジョン・ムーアは、彼女をこう評する。
「セージのライフスタイルや価値観は、まさに私たちが掲げるコンセプト“Find Your Outerknown”を体現している。これは、自分の可能だと思う限界を超えることを意味するフレーズ。彼女はつねに新しい冒険を求め、サーフィンにとどまらずウェルネスやフィットネス、ナチュラルビューティー、そしてクリーンライフに情熱を注いでいて、多くのことに興味をもっている。プロサーファー以上の存在といっていいだろう。いつもブランドにポジティブなエネルギーとフィードバックを与えてくれているよ」
彼女はいま、これまでのコンペティターという枠から飛び出し、自分が信じる新たな道に進むことにした。それは、旅をとおして学び理解したことを活かして、自らの人生を豊かにしてくれた海へ恩返しをすること。この踏み出した一歩こそが、“Find Your Outerknown”そのものである。
シンプルな自然の営みに深い喜びを見出す
セージにとってファッションやクロージングとはどういうものなのだろう? それはムードであり感情、だと彼女はいう。
「その日の気分や自分らしさを感じられるものを私は探している。あるときは柄ものやワイルドなデザインを好んで合わせ、別の日にはベーシックでシンプルなスタイルを選んだり。ファッションの好きなところは、自分の心に響くものを纏うことで、自分をベストな状態にしてくれるところ。だから私はこれといった決まりごとや制限を設けないことにしているの。もちろん着心地の良さは求めているわ。そのうえで素材がどこから調達され、誰の手を経て、どのような工程で作られているのかを知りたいとも思っている。人と人とのつながりを大切にしたいので、製造の裏側で人々が大切にされているかどうかがとても気になってしまう」
アウターノウンとセージの見つめる視線の先はナチュラルに一致している。ブランドのヴィジョンは彼女の想いそのものだ。彼女の人生のなかでもっとも優先すべき課題は、持続可能な未来を作ることだという。そのためには身につけるものや消費するものすべてに意識を向けることが重要。完璧ではなくても、ベストを尽くそうとする献身的な姿勢をつねにもち続ける。そのことを彼女は日々大切にして生きている。
「毎日、陽が昇り、陽が沈むのを見るのが好き。植物が成長し、枯れて、また大きく生い茂って戻ってくるのを見るのも好き。そういう日々のシンプルな自然の営みに深い喜びを見出せることに感謝している。もちろん海も大好き。海は私のサンクチュアリ。気まぐれで、柔らかくて、ときに荒々しくて、私なんかよりずっとずっと大きな存在。そして優美で力強いの。自分を謙虚な気持ちにしてくれる。海はいつもそこにあり続け、私の創造力を開放し、また一貫して楽しませてくれる場所」
オーハイとオアフのノースショアの壮大な大地と海に育まれ、優麗な自然美を目にすることで、柔らかい彼女の心は磨かれてきた。海を心から愛し、健康でいることを望み、そして自然と同調する生活に深い敬意を抱く。その想いは本物だ。
サステイナブルな未来を目指す冒険の旅路
多くの時間をサーフトリップに費やしているセージだが、旅をしていないとき、ヴェンチュラで過ごしている彼女はクリエイティブなひとときを楽しんでいる。ガーデニングをしている自宅のバックヤードなどで摘んだ草花を乾燥させ、ドライフラワーを作っては部屋にディスプレイするのが最近の彼女のお気に入り。
「季節ごとに開く花々、勢いよく繁茂する草木……。種から始まる生命のサイクルを見るのが大好きなの。タイダイ(絞り染め)するのも好きなんだけど、独自の手法でファブリックやクロージングをブリーチしたりもする。私は性格的に、ちょっとごちゃごちゃした感じが好きなの(笑)。色を変化させたり柄を作り出したり、ベーシックなものを少し崩して、自分流に個性を加える感じ。どうやるか見せてあげるわ」
彼女は真新しいアウターノウンのS.E.A. JEANSとプレーンなタンクトップに惜しげもなく漂白剤をスプレーし、ブリーチしはじめた。色を白く抜くか漂白を途中で止めて色味を出すか、どんな模様にするか、脱色を少しだけコントロールしながら個性を表現する。洋服はその人の表れだと語るセージは、他人とは違う自分らしさをそこに見出していく。プレーンな服は安心感を与えるけれど、そこであえて冒険をする。自分にとって居心地のよい場所から飛び出し、新しいことに挑んで成長しようという彼女の“Find Your Outerknown”のスピリットを目の当たりにした。
「ふだん自分が知っている領域を超えて、いろんなことに挑戦するって大事なことだと思う。ブリーチがどんな柄になっていくのかを見るのと同じように、人生が私に何をもたらすのかを見てみたい。それが私の生きかた」
旅先でついた服の傷や汚れは、セージをすごく幸せな気持ちにさせる。なぜならその服は彼女の訪れたすべての場所の思い出を刻んでいるから。さらに新たなデスティネーションに旅するとき、彼女はまたその服をもっていく。そうやって唯一無二のお気に入りができるという。そのためには丈夫で長く着られるアイテムであることが不可欠。サステイナブルなクロージングとはそうした意味あいももっていることを彼女は気づかせてくれた。
同じ考えや価値観をもつ友だちやコミュニティに囲まれていることがいかに幸せかを彼女はよくわかっている。いっぽうで旅することで得られる気づきや学びの大切さも身をもって知っている。
「旅をして出会った人と話すことで、もっと多くのことを学べるし、視野が広がる。海や環境や食の問題もたくさん学んだわ。素敵な人生を送っている人にインスパイアされて、だったら私もこういうふうにできるかもって、人との出会いがきっかけで新しいアイデアが生まれることもある。アウターノウンはそうした私が旅先で経験したことにいつも耳を傾けてくれるの」
前述のジョン・ムーアの言葉どおり、アウターノウンを体現するセージの生きかたは、ブランドが思い描く理想である。それは真っすぐでピュアな感性から湧き起こる信念にもとづく生きかた。同じ信念をともにするアウターノウンとセージの冒険の旅路は、まだはじまったばかり。ただ彼らの道標がサステイナブルな未来を指し示していることは、確かなようだ。
■
photo & text◎Takashi Tomita
direction◎RHC Ron Herman
Special thanks◎OUTERKNOWN
OUTERKNOWN Episode 01
OUTERKNOWNのこれまでの軌跡、これからの未来
記事を読む
「ブランドの精神“True To This”が このお店に息づいている」 ── 脇田泰地さん(Volcom Store Shibuya)
Oct 10, 2024
「キャピタリズムに逆行する。本質的なクラフツマンシップ」 ── 柴田浩次さん(Ride Surf+Sport)
Oct 10, 2024
「時代を彩り、文化に深みを増した。特別な存在に今も夢中です」 ── 井上雅昭さん(Hobie Surfboards Japan)
Oct 10, 2024
Copyright © BLUE.ALL RIGHT RESERVED.