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【特別求人企画】手を取り合う地域医療とサーフィン。徳島県阿南市・海陽町

【特別求人企画】手を取り合う地域医療とサーフィン。徳島県阿南市・海陽町

徳島に息づく自然が
医療に従事する人たちに
豊かな時間を約束する

 阿南市からさらに1時間ほどクルマで南下した場所にある海辺の町が海陽町だ。

 同町も1950年の2万591人をピークに人口減少が進み、現在は8000人ほどが暮らす町となった。町の規模は違っても構図は同じ。医師不足の深刻ぶりも同様であり、そこで海南病院は一計を案じたのである。

 三浦茂貴町長が説明する。

「もう待遇面を向上させるだけでは人は来てくれないだろうと。そこで生活の質的向上を訴求するのも一手ではないかと考えました。それがサーファーの医師や看護師といった医療従事者の募集です。海陽町の魅力は美しい自然で波も豊か。地元のサーファーからは、国内屈指のクオリティがあるのだと聞きます。ですから地域医療に向き合っていただきつつ、ぜひプライベートではサーフィンを大いに楽しんでもらいたい。そのように考え、“ご一緒にどうですか”と阿南医療センターにお声掛けしたところ賛同いただけて、今回のような募集となりました」

海南病院を支える顔触れ。右から、吉永医師、薬剤師の福岡早紀さん、看護師長の石部ひとみさん、三浦町長。「薬剤師は一人なので大変なときもありますが、看護師さんなど他の職種の方と助け合いながら勤務しています」と福岡さん。とても風通しの良い職場だという

 内容は両方の病院を対象とする医療従事者の募集。必ずしも常勤でなくていいと三浦町長はいう。
「一般病床が45の当院は現状常勤医師1名と、他院から週に数日来ていただく医師とで運営しています。やはりドクターが選択権を持つ現在、人材の取り合いと呼べる状況が生まれていて、若いドクターは都市圏に向かう傾向にあります。社会がそうした流れにありますから、常勤にこだわるよりも、阿南医療センターと当院とで数日ずつ勤務するといったフレキシブルな働き方も歓迎する形で募集を行うことにしたのです」

海陽町の三浦町長。日本屈指のサーフスポットである海陽町のトップとして、サーフィンへの理解も篤い

 詳しい募集要項は求人案内(最下リンク)にある通り。いわば阿南市や海陽町に拠点を設け、「公私に充実したドクターライフを送りませんか」というお誘いだといえる。

そして、その誘いに乗ったのが吉永孝優さん、29歳。香川県に生まれ育ち、徳島大学医学部を経て、現在は岡山県の病院で研修生活を送る若き医師だ。4月から週に1~2回のペースで海南病院に勤める予定だというが、きっかけは同病院の先輩である國永直樹医師が先に海南病院での勤務を決めていて、声をかけられたからだった。

「國永先輩には日頃から目をかけていただいていて。もともと専門は泌尿器科とし、オペも行うドクターを目指していたのですが、『そのようなドクターの人生は医療一色。本当に職務に人生を費やせるのか? サーフィンをしたいんじゃないのか?』と問われたこともありました。たしかに多くの先生は人生を捧げるように医療に従事されています。一方、シフト制の救急科には自身のライフスタイルを築く人が多くいたのです。オンタイムはしっかりとスイッチを入れて職務に向き合い、オフは好きなことに邁進する。その姿が格好いいなと。では、自分はどちらか。先輩の問いに、自分らしいライフスタイルは捨てられないと、そう思い至ったんです」

吉永医師(右)と、本企画のコーディネーターを担ってくれた永原レキさん。レキさんは移住サーファーの二世として海陽町で生まれ育ち、四国の波に育まれたサーファー。現在は徳島の伝統文化である阿波藍を広める活動に尽力している。海陽町には藍染の工房を兼ねる拠点「inBetweenBlues」を展開

 進む道を決めた吉永先生は昨夏に具体的な話を聞き、常勤でなくても良いという内容にも背中を押されて立候補。晴れて海陽町の地を踏むことになった。今後は総合診療科の医師を目指すといい、経験を積む意味から、急性期も慢性期も診られる医療現場はありがたい環境だといった。

「以前から海の近くに庭の広い一軒家を建てて、妻と子ども、犬がいて、サーフィンができて。クルマは塩害でサビがすごい。なんていう生活を夢見ていたんです。もちろん春から本格的に始まる仕事次第なのですが、いつかはそのような暮らしをしたいと思っていますし、海陽町ならできるのかな、という思いも持っています」

 徳島の土地柄を思えば、おそらくその夢は叶えられるだろう。仮に阿南市を拠点とすれば、辰巳那賀川の河口にサーフスポットがある。同市出身の武知実波プロによれば「ビーチは遠浅で、フレンドリーな波がブレイク。初級者やこれから始めたい人、子どもにも優しい環境です」という。加えてエリア周辺にはクラシカルウェーブも存在。サーファーの技量を高めるうえで抜群の環境なのだ。

 またSUPクルーズに適したポイントが点在することから阿南ではSUPによる地域おこしプロジェクトを展開。イベントや大会が催される一方、SUP体験自体は日常的に可能だ。一例に、阿南室戸国定公園内の淡島海岸を眼前とする『GOGO SUP&CAFE』ではカジュアルにSUP体験ができるサービスを用意。幻想的な日の出を満喫するサンライズSUPコースなど豊富なメニューで、多くの人が阿南の海の魅力を感じられる時間を提供している。

「GOGO SUP&CAFE」から徒歩すぐの淡島海岸でSUPクルーズ。徳島は太陽が昇る土地。早朝から色鮮やかなサンライズを海の上で目にすることで、気持ち良く1日をスタートできる。

 次に海陽町を拠点とした場合だが、この町は辻裕次郎プロ、林健太プロ、間屋口香プロといった国内チャンピオンに輝いた実力派を筆頭に、数多のプロサーファーを輩出してきた国内屈指のサーフタウンだ。彼らが腕を磨き今も地元にいるときはパドルアウトするのが、隣接する高知県東洋町にあり、コンスタントに波のある生見海岸。過去には世界大会も開催された由緒あるビーチだ。

2014年度の日本王者・辻裕次郎プロ。海陽町ではサーフショップ&アコモデーション「BEACH HOUSE SHISHIKUI」を営む。©Shinichi Ebisudani


 ほかにも周辺には内妻、宍喰、尾崎といったビーチがあり、リーフブレイクや河口の波も味わえるなど海陽町でのサーフィンライフは公私に充実すること請け合い。さらに阿南エリアを含めて山も豊かであることから、山派を自認するドクターも温かく受け入れる。

 こうして地域に息づく豊かな自然環境が間を取り持つことで、地域医療はアップデートに、医療関係者はライフスタイルの充実に、それぞれが明るい一歩を踏み出せることができる。その実例を、阿南市と海陽町は創出したのである。


【求人募集】

海を愛する医療従事者の皆様
その力を必要としています

本取材に協力してくれた「阿南医療センター」、「海陽町立 海南病院」では、ただいま一緒に働いてくれる医療従事者を募集しています。記事を読み興味を抱いてくれた方は、下のリンクより求人内容をご確認いただき、病院までご連絡ください。お待ちしております。

photo◎Ippei Yamasaki(HWS STUDIO)
text◎Takashi Osanai
coodinate◎Leki Nagahara, Minami Takechi

BLUE. 102

2024年5月10日発売

つぎは、ここに泊まろう

2024年5月10日発売

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