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ヴィンテージ感漂う、カールスバッドのコーヒー・バー ── Interim Coffee

ヴィンテージ感漂う、カールスバッドのコーヒー・バー ── Interim Coffee


Interim Coffee」

Carlsbad, California

奥深いコーヒーの世界を知る経験豊富なふたりがオーナーの「インタリム・コーヒー」。厳選されたラテンアメリカ産の豆、経験に裏打ちされた焙煎、熟練のバリスタの腕前、趣味のヴィンテージアイテムが雑然と飾られた気取りのない空間、そしてコーヒーを飲むカスタマーの笑顔。リラックスできる贅沢な時間がここにはある。

 あるとき、サーファーと関わりのある美味しいコーヒーショップを探していると、たまたまカシア・メダーに話したところ、間髪入れず「カールスバッドの『インタリム・コーヒー』がいいわ。すごく美味しいしクールだから!」と言って、その場でオーナーに連絡を入れ始めた。

 カシアの強力なプッシュもあってインタリム・コーヒーを訪ねてみると、なるほど彼女がクールだという意味がわかった。そこは最近流行りの洒落たインテリアのカフェとは真逆の、ヴィンテージ感溢れるものに雑然と囲まれたエスプレッソ・コーヒー・バーといった趣きある空間だった。どうやらリア・ドーソンなども常連らしい。

 オープンしたのは2021年の夏とわりと最近だが、共同オーナーのレイ・オラテとジョン・ハーマンはコーヒー業界歴が長く、レイは16年、ジョンは24年というベテランだ。ロースターでもあるジョンは焙煎歴15年のエキスパートである。一時期ふたりは同じ会社で働く同僚だった。

「私は失業中にジョンと出会った。彼がヘッドロースターをしていた会社で働かないかと誘ってくれたんだ。私はそこでオペレーションマネージャーの職に就いた。ところがあるとき私たちのボスが問題を起こして会社が閉鎖される事態となった。でも私たちには自分たちのコーヒーを待っている卸先の顧客がいた。そこでジョンと私は顧客のためにふたりでビジネスを始めることにしたんだ。そこから少しずつ成長して、いまに至る感じかな」(レイ)

カウンターだけの店内は狭く、人で溢れかえることも。どんなに忙しくてもジョンたちはコミュニケーションを怠らない。同じ人が淹れてくれる変わらない味と会話が大事なのだ

長く業界にいてコーヒーに長けているレイ(右)とジョン(左)。後ろにあるのは1988年製プロバット。ジョンがきれいにオーバーホールしたマニュアルの焙煎機だ。こうした古いものも扱えるが、ジョンはコンピューター制御された最新の焙煎機のプログラミングもできる、焙煎のスペシャリストなのだ

 大手の顧客と取り引きするのに屋号が必要になった。名前の候補は多々あったけれど、しっくりくるものがなく、最終的に友人が提案してくれた「インタリム」がピタリとハマった。意味は、合間、暫時、一時的に。それは勤務先の会社がなくなり失職し、とりあえず自分たちで焙煎と卸売のビジネスを始めたふたりの状況を見事に言い表した言葉だった。彼らはオーシャンサイドのウェアハウスで焙煎し、卸売のビジネスを続けながら、コロナ禍にカウンターだけの店をオープンする。それがこの「インタリム・コーヒー」。屋号がそのまま店名になった。

「店の規模は小さいけど、これが私たちが望むもの。成長しすぎて誰かに任せるようになると味の一貫性が保てなくなる。私とジョンとカスタマーとの繋がりは非常に個人的なものなんだ。同じバリスタから同じ味のコーヒーが提供されるからみんな安心してここに飲みにきてくれる。それを大事にしていきたい」(レイ)

 彼らはバリスタによってコーヒーの味が大きく左右されることを知っている。だから卸先にはその店のプライベートブランドとして豆を卸しはするが、インタリムの名は出さない。バリスタの腕によってはコーヒーの味が変わり、それがインタリムの評価を落としかねないからだ。焙煎には自信を持つが、そこから先の味には責任を持てないことを長くこの業界に携わってきたからこそ理解している。逆に馴染みの取り引き先のオーナーからはその店のコーヒーの味見をしてほしいと頼まれることがある。ジョンとレイの味覚はそれだけ信頼されているのだ。そんなインタリムでもっとも人気なのがカプチーノ。それはコクがあって確かに美味しかった。

レイの友人のサインペインターがヴィンテージのテーブルトップに書いたメニューを中心に、白い壁いっぱいに写真が飾られる。こうした作品のひとつひとつが店の世界観を創る

サーフィンとコーヒーは
日々のリラックスに欠かせない

 彼らは欲しかった中古の焙煎機を新たに手に入れた。1988年製のプロバット(高品質で有名な焙煎機ブランド)だ。これをジョンが分解し丁寧にオーバーホールした。

「年式的にそれほどヴィンテージではないけど、コンピューター制御ではなくシンプルな構造なんだ。最近のマシーンはほとんどが自動化されていて、ボタンを押せば全自動で焙煎してくれるが、これはすべて手動。環境の変化に応じて温度調整するなど、古き良き時代の焙煎機の巧みな操作法を熟知していないと扱えない。視覚と聴覚を駆使してね」(ジョン)

 ふたりとも古いコーヒー機器の収集癖があり、こうした手動のマシーンを手のかかるヴィンテージカーに例える。筋金入りのヴィンテージカー好きのレイはサーフボードやレコードも収集していて、趣味とサイドビジネスも兼ねてリセールもしてきた。その趣味が高じて、いまは毎月「コーヒー・カー&ヴィンテージ・サーフボード・スワップ・ミートアップ」というイベントを店の前のパーキングで開催している。これは誰もがヴィンテージグッズを持ち寄って販売もしくはスワップすることができるというもの。ピッグのムーブメントを主導したマイク・ブラックもヴィンテージカーに自慢のピッグを積んで現れるという。ここにもまたサーフコミュニティがしっかりと根付いていた。

焙煎をビジネスにしているので、コーヒーのクオリティには絶対の自信がある。他店に卸もしているが、他所で自分たちの名を出すことはない。インタリムの名を冠したコーヒーが買えるのはこの店だけだ

 インタリムの営業時間は朝8時から。ちょうど海上がりのローカルサーファーがコーヒーを求めてやってくる時間に開く。朝イチにサクッとサーフィンしたレイはカスタマーと波の話題で盛り上がる。もちろん仕事前に立ち寄る人もいるし場所がら観光客もくるが、店はビーチから100mも離れていないため、パーキングには代わる代わるボードを積んだクルマがきて、裸足でコーヒーを飲みにくるサーファーが絶えない。

 レイは非日常を強いられたコロナ禍で「サーフィンがどれほど日常を取り戻すのに役立ったか」と振り返る。日々の暮らしのなかの当たり前の行為であり、気持ちをリラックスさせてくれるもの。そう、波に乗ることとコーヒーを飲むことはとても似ているのだ。

客足が少なくなった午後、レイは店の裏の秘密のストレージからスキップ・フライのグライダーを取りだす。愛車の1964年フォード・ファルコン(最初の写真のクルマ)のルーフキャリアにボードがあれば、夕方も波があることのサインだ。

── Blue.104号「Good Coffee, Good Community」より

photo&text ◎ Takashi Tomita

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