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子どものころから教科書にドローイングばかりしていた。絵だけでなくコミックや詩も。彼の心は遊びたくてうずうずしていて、創作はそれを解放する手段だった。徐々に自分の殻から抜け出し始めたクリスは、アートの背景にストーリーを込めるようになった。そんな折、ホノルルのカフェ「アーヴォ」に描いたミューラルがきっかけで、彼はアーティストとして広く知られるようになる。
「あれは楽しかった。僕は突然グラフィティ・アーティストとしてアートの世界に導かれた感じ。アーヴォのアートからすべてがはじまったといってもいい」
カフェの地面いっぱいに描かれた作品は、無許可だったために施設運営者と市により消され、もう見ることはできない。しかし描かれた当時はカフェの顔になり多くの人に支持された。SNSで「アートを消さないで」というたくさんの嘆願が拡散されたほどだ。




クリスのアートのスタイルはサーフィン同様に実に自由。ナプキンにドローイングすることもあれば、スリフトストアで買った額装されたアートに上書きでペインティングすることも。木版画も彼が好む表現スタイル。そのパターンはクロージング・ブランドやタオル・ブランドとのコラボに発展する。どんなスタイルであれ、その作品からは生まれ育ったハワイの自然が色濃く感じられる。土臭くなりがちなネイティブなモチーフをモダンなセンスで軽やかに明るく開放的に描くのが特徴だ。
「いつもアートを通して何かストーリーを語ろうとしている。それが創作する唯一の理由。僕が経験したことを見る人にも体験してもらいたいという思いがある。そのほとんどが海で経験したことや自然に抱かれているフィーリングに由来しているんだ」
彼の創造力はフォトグラフィーや映像でも発揮される。撮った写真を組み合わせるジャクスタポジションという技法も彼の作品スタイル。ストーリーと美意識が完璧に組み合わさった写真作品のことを彼は「ソウルメイト」と呼ぶ。フォトグラフィーで培った感性はやがて映像作りにも活かされていく。カリフォルニアの大学に進学し、映画について深く学んでもいる。これまでに『イン・ダンシング・デイズ・オブ・ドーン』と『ホイッスル・オブ・ワイルダーネス』の長編作品2本を制作。どちらもサーフ、アート、スケート、ライフスタイル、旅、そして哲学的でスピリチュアルなエッセンスが込められていて、クリスの自然観を感じとることができる。とくにデイブ・ラストヴィッチ夫妻に見出された処女作『イン・ダンシング・デイズ・オブ・ドーン』は、世界各地のサーフフィルム・フェスティバルで上映され、映画監督クリス・ミヤシロの名を世に知らしめた。




「いま新しい作品を撮っているところ。サーフィンとセーリングと冒険がテーマ。間違いなく自分が誇りに思う作品になると確信している。映画と同じストーリーで子ども向けの絵本も制作したいな」
大胆で繊細、野生的で無垢でいつだって自然体。まるでクリス自身がどこか深いところで地球と結びついているかのよう。自然の中で美しい体験をするたびに、その繋がりはまた深くなる。そして彼はいま先人たちとも繋がった。外洋を航海した古代のポリネシアンたちと同じ体験をし、海を渡ることの意味を知ろうとしている。今後は自分のカヌーで日本を含め太平洋の諸国を旅することを夢見ている。間違いなく海を渡る冒険は、これから彼が生み出すたくさんのアートのインスピレーションの源となることだろう。


photo & text ◎ Takashi Tomita
Blue.103号 「3 Stories from Hawaii」より抜粋
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