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「舟が僕たちを見つけてくれたあの日、故郷ハワイに戻る旅が始まったんだ」。約5,000kmにおよぶ太平洋横断の旅を記録した『’A’ā  ―故郷に導かれるカヌーでの航海―』の監督、クリス・ミヤシロにインタビュー

「舟が僕たちを見つけてくれたあの日、故郷ハワイに戻る旅が始まったんだ」。約5,000kmにおよぶ太平洋横断の旅を記録した『’A’ā  ―故郷に導かれるカヌーでの航海―』の監督、クリス・ミヤシロにインタビュー

「航海を通して、海は私たちを隔てるものではなく
世界をつなぐ“道”として捉えられるようになった」

—— 作品についても教えてください。物語は息をのむような大海原や航海中のリアルな喜怒哀楽を映し出しながら、ときにユーモアを交えたナレーションと共に紡がれていきます。そんななか、印象的だったのが作中に挿入されるクリスのアート作品でした。

単にセーリングの様子を記録したドキュメンタリー映像ではなく、アーティストとして歩んできた自分自身の軌跡も詰め込んだ作品にしたかったんです。今作のために描き上げた作品はもちろん、これまで制作してきたアーカイブ作品も数多く取り入れています。

—— アートのインスピレーションはどこから湧いてくるんですか?

私が海で経験してきたこと、これまで生きてきた時間、そのすべてがつながり、アートとして形になっていく。言い換えれば“人生そのものがアート”なのかもしれません。言葉ではうまく説明できないものですが、私にとってのアートはこの世界の捉え方でもあり、世界から受け取るエネルギーやパワーを表現する手段でもあるのです。

—— そんなクリスの経験や表現をひとつにまとめ、現時点での集大成ともいえる本作は、先の2月に開催された『Cinema at Sea – 沖縄環太平洋国際映画祭2026』でも上映されたそうですね。聞けばクリスのルーツは沖縄にあるとか?

はい、私には50%沖縄の血が流れています。だからこそ、自分のルーツがある島に実際に足を運び、その砂の上に立てたことは感慨深いものでした。今回は滞在期間が短く、その伝統や文化に深く触れることはできませんでしたが、次はもっとゆっくり訪れたいと思っていますし、いつの日か「’A’ā」に乗ってハワイから沖縄まで航海できたら最高ですね。

—— 沖縄での上映に加えて、パタゴニアで上映会を実施するきっかけもあったのですか?

今回パタゴニアでこのような機会をいただけたのは、サーフィンアンバサダーの田中宗豊さんのおかげです。彼が実践しているライフスタイルや物事に向き合う姿勢、そしてマインドセットのすべてを心から尊敬しています。彼がどのような活動をしているのかを自分の目で見たくて、2024年に私は宗豊さんのホームである徳島を訪ねたんです。そこで交流を深め、翌2025年には今度は宗豊さんがハワイにいる私のもとを訪ねてくれました。ハワイでは、尊敬する年上の男性のことを「UNCLE(アンクル)」と呼びます。私にとって宗豊さんは、まさにそんな存在です。

「大阪から東京へ向かう道中、パタゴニアのサーフィン・アンバサダーである金子ケニーさんを訪ねて、葉山の『PADDLER』へ立ち寄ったんです。みんなでSUPクルージングをしたとき、水面に反射した太陽の光がまるで僕たちを迎え入れてくれているようでした」。そんな宗豊さんのスピーチで幕を開けた東京会場。リアルな空気感を大切にするため台本は用意せず、軽快なトークで会場を盛り上げた
ライフスタイルブランド「Yoint」のディレクターであり、モデルとしても活動する大塚寛大さん。カリフォルニアでクリスと出会い、親交を深めてきた仲。この日は通訳として登壇し、ふたりの橋渡し役を務めた

—— Blue.107号で宗豊さんがクリスのもとを訪ねたハワイへの旅を紹介させていただきました。その記事のなかで、宗豊さんがクリスのカヌーに乗る姿がとても印象に残っています。サーフィンやセーリングなど、クリスはこれまで海から多くの恵みや気づきを受け取ってきたと思います。そんなクリスは海からどんな学びを得てきたのでしょうか。

ハワイで育った私には、サーファー、パドラー、セーラーなど海に関わる友人がたくさんいて、幼少期の思い出のほとんどが海とともにあります。だからこそ、カヌーでセーリングをしていると、子どもの頃の楽しかった記憶や美しかった景色が次々と蘇ってくるんです。単純に海にいる時間が自分にとっていちばん自然体でいられる時間なのだと思います。そしてセーリングをするたびに、言葉や文化は違っても海を通じて喜びを分かちあえる、自分自身が世界中の人々とつながっていることを実感できるのです。ただ、忘れてはいけないのは、日々自然に包まれ、海と触れ合える環境は決して当たり前ではないということ。そして海だけでなく、川の水や私たちが日々口にする水も含めて、“水”は人々の暮らしや命を支えるかけがえのない存在。だからこそ、水を、そして自然を大切にする気持ちと感謝を、私たちはいつも心に留めておくべきだと思うのです

—— 最後に、スターナビゲーションによる太平洋横断という特別な経験を経て、クリスのなかで世界の見え方はどのように変わりましたか?

自分で航海をして気づいたのは、ハワイも海を通じて他の大陸とつながっているし、逆に大陸も海を通じてハワイとつながっていること。海は私たちを隔てるものではなく、世界をつなぐ“道”として捉えられるようになりました。それが、この航海を通じて得た最も大きな気づきでしたね。

上映会の会場のひとつとなった「パタゴニア東京・原宿/アウトレット」。サーフィンや素潜り、SUPなど、オーシャンアクティビティにまつわるアイテムが豊富に揃う。またイベントなどを通じて海を愛する人々が集い、新たな価値観や想いをシェアするハブとしての役割を担う
会場に集まった参加者たちは、クリスが描き出す世界観に引き込まれていた

photo◎ Junji Kumano
translation◎ Kandai Otsuka

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